大会スタッフリレーエッセイ

参加チームのみなさんへ
第16回大会実行委員長 玉正忠嗣

学生フォーミュラ公式ブログでは、本大会スタッフのリレーエッセイを掲載することになりました。大会運営の中心スタッフから参加される方々に向けて、自己紹介やこれまでの大会への関わり、普段の仕事に関すること、参加者へのメッセージなど、ざっくばらんに執筆していただきます。大会運営のことを少しでも身近に感じていただければ幸いです。

第1回目は、今年の大会実行委員長である玉正忠嗣さんに登場いただきました。


まずは自己紹介から

玉正 忠嗣(たましょう ただし)。1963年(昭和38年)大阪生まれ。1989年(平成元年)日産自動車に入社、中央研究所車両研究所(現、総合研究所モビリティ・サービス研究所)に配属。バブルのなごりがまだある中で「新人類」と呼ばれていて、当時の旧人類からはややこしいと言われていた世代。入社早々、人事から「今年の新人は……」と言われていたのも事実。今ではすっかり旧人類側ですが。

第16回大会実行委員長(玉正氏)

世界的には燃費規制まっさかりで最初の仕事は低燃費タイヤの開発。入社1年目から国内4大タイヤメーカーの方々と論議と試作の繰り返し。同時に車両側では、低燃費化にともなって変化するタイヤ特性に合わせるようにサスペンション特性を変えて車両側でカバーできるかどうかの検討。「コンプライアンスステア」や「ばね上共振」など学生フォーミュラのみなさんが口にしている単語を私は会社で初めて知りました。

そんな中、省エネ・新エネの流れでソーラーカーがブームに。日産も少し遅れて研究所で開発開始。低燃費に関係していた私もメンバーになり、コースシミュレーション、タイヤ、サスペンションを担当。1992年、1993年の鈴鹿サーキット、1993年のオーストラリアでのレースを経験しました。ここが私と電動車との関係の始まりです。

その後、バイワイヤー化や電動化の流れの中、ブレーキ、ステアリングとシャシー系のハード開発を一通り経験。システム作りから、自由度の増えた車両の運動開発にも取組みました。基本的にはシャシー屋です。

車両では、東京モーターショーに出展された将来電気自動車FEV(1991)、前述のソーラーカーSun Favor(1992、1993)、4輪操舵のPIVO(2005)、バイクのように傾いて走るLand Glider(2009)のシャシーシステム、車両運動の技術開発側に携わりました。

学生フォーミュラとの関わり

そんな感じで過ごしていた2010年末あたりから学生フォーミュラのEV準備委員会に参加することに。翌2011年にEVデモ大会をするとのことでした。当時の日産の実行委員より「EVを始めるから加わって、いろんな意見を言ってくれ」的な誘いに軽い気持ちで。当時からゼロから作るEVの実験車をいくつか作っていたのがその理由。高電圧で危ないから、としきりに反対していたのですが……

2011年のEVデモ大会後、2012年のEVプレ大会に向け、いきなりEVワーキングのリーダーをすることに。それと同時に大会実行委員会のメンバーにも。プレ大会はドイツのFormula Student Electricのルールに準じて全メニューを実施し、翌年の正式大会に向けてのトライアル。ドイツの真似をするだけでしたが準備することはいっぱいありました。その後も2013年のEV第1回大会(ICVは第11回大会)から2016年のEV第4回大会(ICVは第14回大会)までEVワーキングのリーダーを続けることになりました。

最初は開催することになったEVクラスをとにかく安全に開催することを義務的にやっていましたが、学生のみなさんの熱さに触れ、どうサポートしたら電気車検に合格できるか、EVらしさをもって走行できる車両になっていってもらえるか、という普及・拡大・レベルアップを考えるようになっていきました。普及・拡大という面ではまだまだですが、昨年、EVが総合4位になったことはかなりうれしい出来事でした。

昨年の第15回大会から実行委員長をやっています。実行委員長になった今は、学生フォーミュラ大会という場を可能なかぎり完全な形で提供すること、つまり、とにかく安全に全審査を実施すること、これまでに出ていた課題を解決することを念頭に準備を進めています。

参加チームのみなさんへのお願い

参加チームのみなさんにお願いしたいことはいろいろありますが、1つに絞れば「考える習慣を身につけてほしい」ということでしょうか。

モノは正直なもので、考えていたところはだいたいそのように動くのですが、考えていなかったケースで思わぬことが起こる。考えていなかったのだから「思わぬ」も当たり前。どういうケースを想定すべきか、の勘所は実体験とともにしか学べないと思っています。モノにしてもそう、コトにしてもそう。どういう理由でそうしたか、それによって何を期待しているのか、それはその通りになったのか。ならなかったら、なぜならなかったのか、だったらどうすればいいのか……

学生フォーミュラ大会は、絶好のエンジニアリング実践の場だと思います。私たちは場の提供しかできません。いっぱい失敗して、いっぱい考える、その場として活用していただけたらと思います。


次回は、大会実行副委員長であり動的イベントリーダーでもある中澤広高さんです。